岸田文雄首相は最後の訪韓で韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と会談し、改善した日韓関係を今後も継続していくことを確認した。ただ、両国間には依然として課題も残る。日韓国交正常化60年を迎える来年は、新首相のもとで日韓関係を安定させられるかが鍵となる。
ソウルの大統領府で行われた会談は、両首脳と通訳ら少人数での会合ののち全体会合に移った。尹氏が「私たち2人の堅固な信頼を基盤に、韓日関係は大きく改善した。ともに成し遂げた成果は、私の大統領就任後で最も意味のあることだ」と強調すると、岸田氏も「日韓の間には様々な歴史や経緯もあるが、困難な時期を乗り越えてきた先人たちの努力を引き継ぎ、未来に向けて韓国と協力していくことは極めて重要だ。昨年の相互訪問を経て、日韓関係の新たな章が開かれ、両国の交流が拡大し相互理解が深まっていることをうれしく思う」と応じた。
一方で尹氏は、岸田夫妻との夕食会で日韓関係の難しさにも触れ、「今後も予測しがたい難関が訪れるかもしれないが、揺らいではいけない」と語った。
良好な日韓関係を定着させたい両政府は、両国民が関係改善の「恩恵」を実感できるような措置を模索してきた。今回合意した第三国での国民保護の相互協力は、その試みの一つだった。日本外務省幹部は「協力を文書化しておくことで『(退避輸送機などの)席が余っているときにまず日本に声をかけよう』といった動きが今後もしやすくなる」と話す。
日韓関係は、安倍晋三、文在寅(ムンジェイン)両氏の政権下の2018年10月、元徴用工の訴訟で韓国の大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じたことなどから、一時は「戦後最悪」と言われるまで冷え込んだ。
だが、尹氏が22年5月に大…